投資家歴10年の個人投資家。ベンチャー企業の役員も務める。慶應義塾大学在学中に株式投資を始め、米国から新興国まで含んだ世界中の株式投資、債券、不動産、コモディティまで幅広く運用中。
2014年から不動産中古ワンルームマンション投資、2017年からロボ投資、2018年からソーシャルレンディング、不動産投資クラウドファンディングも開始し、現在も継続中。
相続などで取得した土地は、アパート経営をして土地活用するのがオススメです。
土地の活用方法は、「売る」か「自宅を建てる」か「貸す」しかありません。
先祖代々より受け継いできた土地を売却するより、守っていきたいものではないでしょうか。
また、自宅もすでに構えている場合、そう簡単に引越しできません。
残る選択肢は「貸す」ということになります。
貸す方法はさまざまありますが、アパート経営が収益を含め、一番メリットが大きいでしょう。
ここでは、土地所有者がアパート経営をする際のメリットを解説し、必要な自己資金と注意点について説明していきます。
目次
土地活用してアパート経営をするメリット2選
土地所有者がアパート経営をするメリットは大きく2つ、
- キャッシュフローが土地購入者より良い
- 相続税対策になる
がありますので解説していきます。
キャッシュフローが土地購入者より良い
アパート経営はサラリーマンにも副業として人気がありますが、多くの方は土地を購入してアパート建築をしなくてはいけないため、収益が弱いです。
一方すでに土地を所有している方は、土地代金が不要となりますので、キャッシュフローが高い傾向にあります。
一つ例を挙げて、土地を所有している場合と土地を購入する場合を比較してみましょう。
土地所有者がアパート建築する場合の条件
条件の詳細について、表にまとめました。
木造アパート建設費用 | 7,000万円 |
借入金額 | 7,000万円 |
借入期間 | 30年 |
金利 | 1.5% |
間取り | 1K |
世帯数 | 8世帯 |
家賃 | 7万円 |
- 毎月の家賃収入
70,000円/月×8世帯=560,000円/月 - 借入返済
7,000万円を30年で元利均等返済した場合241,584円/月 - キャッシュフロー(手残り)
家賃収入560,000円/月-借入返済241,584円/月=318,416円/月
土地を購入してアパート建築する場合の条件
条件の詳細について、表にまとめました。
木造アパート建設費用 | 7,000万円 |
土地代金 | 5,000万円 |
借入金額 | 12,000万円 |
借入期間 | 30年 |
金利 | 1.5% |
間取り | 1K |
世帯数 | 8世帯 |
家賃 | 7万円 |
- 毎月の家賃収入
70,000円/月×8世帯=560,000円/月 - 借入返済
12,000万円を30年で元利均等返済した場合414,144円/月 - キャッシュフロー(手残り)
家賃収入560,000円/月-借入返済414,144円/月=145,856円/月
上記を見比べても、土地所有者であれば土地代金もかからないため、借入金額も少なく、キャッシュフローも大きい特徴があります。
しかし、実際の空室率も加味する必要があります。
2018年度の全国平均空室率は21.4%です。
引用:https://www.chintai.or.jp/common/img/pdf/h30akiyakakuhou.pdf
土地を購入してアパート建築した場合、2部屋空きが出たら、空室率は25%となり、赤字経営となります。
一方、土地所有者の場合は空室率50%でもキャッシュフローが出ることがわかるでしょう。
相続税対策になる
現金でアパートを建築した場合、相続税対策にも繋がります。
相続税は資産価値によって納税額が決まりますが、現金よりアパートの方が資産価値は低くなります。
例えば、現金1億の場合、相続の際は1億円に対し納税額が決まります。
一方、1億円の現金でアパートを建築した場合、資産価値はおおよそ6割から7割ほどになり、納税額も少なくすることが可能です。
アパート経営をする場合自己資金はいくら必要か
アパート建築を金融機関等からの借入で始める場合、必要自己資金は総事業費の3割ほどと言われてます。
総事業費の内訳は建築費が7割、諸費用が3割と言われており、金融機関の見解は、諸費用分は自己資金で対応するというのが一般的です。
しかし、諸費用分も含めた総事業費を全額融資してくれる金融機関もあります。
土地の価値、事業性の価値、土地所有者の価値などが判断材料です。
ここでは金融機関がどのように判断しているかを解説していきます。
実際のシミュレーション
金融機関が全額融資する際の判断基準は下記の3つ、
- 担保評価
- 事業収支
- 属性の確認
になりますので解説します。
担保評価
担保評価とは、その土地と建物がどれくらいの資産価値なのかを評価する事です。
金融機関から借り入れする際、必ず担保評価計算をします。
土地の担保評価は敷地面積(㎡)×路線価×40%で算出可能です。
路線価とは、国税庁が定める宅地の1平方メートル当たりの評価額を指します。
建物の場合、担保評価は本体金額×0.5×40%で算出可能です。
土地と建物の担保評価を合算し、建築費用より大きければ全額融資してくれるケースもあります。
不足している場合、共同担保を要求するケースもあります。
共同担保とは、アパート建設予定地とは違う土地に、担保を設定する事です。
設定されることにより、その土地が売却できなくなる場合や、その土地でアパート建築する際、他の金融機関から借入出来なくなります。
共同担保は身動きできなくなる土地でもあるので、極力避けましょう。
事業収支
金融機関はアパート経営の事業性を検証する際は、下記の3つの条件、
- 入居率70%
- 借入金利4%から5%
- 借入期間20年
を踏まえて検証します。
条件を踏まえ、毎年の事業収支が黒字であれば全額融資も可能となる場合があります。
この条件をクリアできるのは、アパート経営の利回りが10%以上となるでしょう。
属性の確認
アパート経営をする方の資産、つぎの事業者を確認します。
金融機関はアパート経営をする方の資産が多いほど、全額融資をしてくれやすくなります。
将来、相続税対策などでアパート建築をする際、融資相談してもらうためです。
また、賃貸住宅の事業者が亡くなった後、次の事業者が
- 事業者が返済の力があるのか
- 事業を継続していける能力があるのか
を判断します。
もちろん返済能力がないと判断すれば、金融機関は融資不可と判断するでしょう。
サラリーマンが融資受けるには
サラリーマンが土地を購入してアパートを建築する際は、年収1,000万円以上と言われております。
しかし、土地を所有しているサラリーマンの場合、その土地でアパート経営が成り立つので、金融機関は年収を加味しないケースが多いです。
その土地で経営するアパートの担保評価、事業性、利回り、家系図などから金融機関は判断します。
また、運転免許証も確認し、12桁目の数字が3以上であれば融資不可となるケースが多いです。
12桁目は、免許証の紛失回数の数字であり、紛失が多い人はだらしないと判断されます。
金融機関は、借入返済を滞納や延滞する恐れがあると考慮するためでしょう。
アパート経営をするうえで注意する事3選
これまでアパート経営を始める際の自己資金について解説してきました。
次にアパート経営をするうえで注意する事を3つ、
- リスクを分散する
- 利回りばかりを見ない
- 建築動機を確認する
を解説していきます。
リスク分散する
リスク分散について、2つの具体的な内容で説明します。
同じ間取りにしない
アパート経営を複数棟所有する場合や、1棟あたりの世帯数が多い場合は、同じ間取りにしないことをオススメします。
もちろん需要が一番大切ですので一概には言えません。
しかし、間取りが同じであるために、物件同士競合してしまうことが考えられます。
また、学生をターゲットにした1Kなどの間取りは、3月に一斉退去される恐れもあります。1LDKなど、社会人用の間取りも含める事を検討しておきましょう。
サブリース管理をする
アパート経営は空室のリスクがあります。
空室リスクを抑えるためにサブリース管理をオススメします。
サブリース管理は、空室があっても毎月一定の収入を得る管理方法です。
不動産会社の一般管理と違い管理手数料は高いものの、空室リスクを抑えることが可能でしょう。
利回りばかりを見ない
アパート経営の利回りはとても重要な指標であり、悪ければ収益は出ません。
利回りを最優先するのであれば、敷地に対して収益を一番多く出せる1K一択になるでしょう。
しかし、利回りが良いからといっても需要が無ければ意味がありません。
地域の需要に合った間取りを検討しましょう。
建築動機を確認する
アパート経営を始める際は必ず動機があります。
収益が欲しいのか、相続税対策なのかによって建築金額、間取りも変わってくるでしょう。
相続税対策なのに収益が高いアパート経営をした場合、毎年キャッシュが溜まっていくので、資産が増えて行き、対策にならないなどのことも考えられます。
そのため、アパートを経営する動機を忘れずに、用途に合った事業を検討する必要があります。
まとめ
土地所有者がアパート経営をする際のメリットと必要な自己資金と注意点を解説していきました。
土地を所有している場合は、土地がない人と比べて、資金面もキャッシュフローもアドバンテージがあります。
そのまま更地にしていても固定資産税を支払うだけになりますので、アパート経営をして収益を生む土地にしましょう。