ひと昔前とは異なり、不動産売買においてはインターネット技術が不可欠となっています。

ポータルサイト等から物件の情報を参照し、不動産選びの判断材料とする手法が一般的なものとなりつつあるのです。

そうした流れは海の向こうアメリカにおいて特に顕著であり、近年さらなる次世代のテックサービスが台頭しています。

この記事では、米国内の不動産業界において大きな注目を集めているテック企業群「ZORC」について解説していきます。

ZORCとは?

ZORCということばは、アメリカにおいて大きくシェアを拡大している不動産テックサービス企業4社の総称であり、それぞれ「Zillow」「Opendoor」「Redfin」「Compass」という社名です。

これら4社は不動産の売買や賃貸に関するポータルサイトを運営しているという共通点を持ち、現在も熾烈なシェア争いを繰り広げています。

4社の特徴として、当初は物件の売り手と買い手をつなぐ事業のみを展開していましたが、それぞれが独自のビジネスモデルに基づきオリジナルのサービスを運営することによって頭角を表した点で共通しています。

ZORCは、昨今のアメリカ不動産業界を語る上では無視できない存在となっているのです。

ZORC各社の特徴について

ZORCと一括りにされて語られることも多い各4社ですが、それぞれかなりユニークな特徴を有しており、得意分野も異なっています。

これら4つの企業が運営しているサービスについて概要を説明していきましょう。

Zillow

ZORCの中でも古参的な企業のひとつが、「Zillow」です。

不動産の売買や賃貸に関する情報を取り扱っているというのは他ポータルサイトと同様ですが、最大の特徴は圧倒的な情報量です。

豊富なデータに基づいた物件の査定額算出だけではなく、その周辺情報までが網羅されており、アプリでの3D内覧などもできるようになっています。

近年はiBuyer事業にも参入し、さらなる成長が期待されています。

Redfin

4社の中ではZillowに並ぶ古参企業であり、ポータルサイトのみならず自社で不動産の仲介事業も運営しています。

自社のポータルサイトにアクセスしてきたユーザーのニーズを拾い上げ、仲介を担当するエージェントを安価な手数料で紹介し契約するというビジネスモデルを主軸としています。

不動産に関する情報精度の高さもさることながら仲介手数料の安さが評価され、そのシェアはZillowに勝るとも劣らないほどです。

Opendoor

2013年に創業された「Oppendoor」は、オンラインでの物件転売事業であるiBuyerをメインの事業としています。

買取における余計なプロセスをことごとく簡略化し、査定から現金化まで最短2日(引用:スマーブで完了させることができるというのが大きな特徴です。

このビジネスモデルが非常に大きな成功をおさめたため、同社はiBuyer事業のスターター的な存在として評価されています。

Compass

アメリカン・エキスプレスやゴールドマン・サックス等名だたる大企業の資金援助を受け2012年に誕生したのが「Compass」です。

この企業ではアメリカの各主要都市にて事業を展開している不動産仲介業者と連携し、他社よりもはるかに安価なマージンと豊富な情報ツールで支援することで業績をあげています。

近年はエンジニアの採用やスタートアップ企業の買収を積極的におこない、さらなる事業の拡大を目論んでいます。

ZORCのサービスを利用するメリット

これらZORCの企業が展開しているサービスを利用するメリットとしては、どのようなものがあるのでしょうか。

より自由に、安く物件のやりとりができる

より自由かつリーズナブルに物件のやりとりができるようになったということが挙げられます。

ZORC4社が登場するまでアメリカでの不動産は、各地で事業を展開している仲介業者が幅を利かせていました。

しかし、このような状況でIT技術を活用したZillowRedfinなどのポータルサイトが登場したことによって、それまで仲介業者に支払っていた手数料等の費用を支払わずとも、インターネット上で希望する物件の情報をリサーチできるようになったのです。

それに加え、スピーディに豊富な情報へアクセスすることができるというメリットもあります。

簡潔に言えば、ZORCの利用によって不動産探しがより安価に、かつスピーディーに行えるようになるのです。

それに加え、アプリを利用することによって自宅にいずとも手軽に不動産情報のリサーチができるという点も非常に便利で、最近ではZillowのようにアプリ内で物件の内覧が行えるサービスが利用できるという利点もあります。

大多数の情報が豊富な情報にアクセスできる

もうひとつ挙げられるのは「情報の可視化」です。

これまでの不動産取引というのは仲介業者の存在が大きく、公平なやりとりが行えるかどうかは彼らのモラルや裁量に少なからず委ねられていました。

たとえば「このような物件を買いたい」と思って仲介業者に希望を伝えたとしても、彼らはそれに従わずいまいちな物件を強引に押し付けるといったようなこともあり得たわけです。

しかし、ZillowRedfinのように下手な業者よりも豊富な情報を持つポータルサイトが登場すれば、ユーザーはそのようなモラルの低い仲介業者に頭を下げずとも、自分が望むような条件を備えた物件を見つけ出すことができます。

ZORC等の不動産テック企業によって大多数の人々が障壁なく情報へアクセスできる環境が整えられたことによって、誰もがより公平な不動産取引を行えるようになったのです。

仲介業者にとっても利益となる

これだけ見ていると、既存の不動産仲介業者にとってZORCのような不動産テック企業の台頭はあまりメリットがないかのように思えますが、必ずしもそうとは言い切れません。

たとえば先述したCompassは各都市の仲介業者と積極的に連携することによってそのシェアを拡大しています。

豊富なデータと顧客の獲得が期待できる不動産テック企業の技術力とネットワークは、仲介業者にとっても大きな利益をもたらしてくれるのです。

使い方がシンプルでとっつきやすい

使い方がシンプルであるというのもまたメリットのひとつと言えます。

基本的な機能を使うにあたってほとんどのサービスでは特別な資格などを必要としません。

ただ物件を探したいだけであれば、ホーム画面から検索を行うだけで希望している情報をすぐ閲覧することができるのです。

情報が見たいだけなら、どこかへ出かけたり人と会ったりしなければならないという必要もありません。

だからこそ、多くのユーザーを獲得できているのです。

ZORCのサービスに関する課題

このようにさまざまなメリットがZORC企業の不動産関連サービスですが、完全無欠というわけではありません。いくつか解決をしなければならない課題も抱えています。

いくつかの具体的な課題についても紹介しておきましょう。

競争の激化

Zillowのようなポータルサイトは億単位もの物件情報を掲載しているとされ、ユーザーは検索を行うことでそれらを自由に閲覧することができるようになっています。

しかし、不動産情報を登録している仲介業者にとっては、それだけ競争相手が多いということでもあります。

これがユーザーと直接対面する形式であれば自分たちから契約を結んでほしい物件を勧めるということもできましたが、ユーザーが能動的に情報を取捨選択できるポータルサイトのスタイルではそれができず、間取りや価格等条件が上回っている物件が多数存在すると途端に苦戦を強いられるようになってしまうでしょう。

ポータルサイトへの情報の掲載も無料ではなく広告課金を負担しなければならないので、優良な物件を用意できない業者は思ったように利益を得られないということも十分あり得ます。

これによって不利益を被りやすいのは、それほどの資本力を持たない不動産業者です。優良な物件を複数所有することができず、なおかつ掲載のための資金にもかぎりがあるため、ポータルサイト上でも大手との競争において不利となることが少なくありません。

しかしながら、これに関しては逆に言ってしまえばたとえ小規模な事業者であっても優良な物件を取り揃えることさえできれば大手に対抗できるということでもあります。

情報過多によるオーバーロード

ポータルサイトが所有している豊富な情報量は、一部のユーザーにとってむしろ足を引っ張る存在となってしまうこともあります。

これはネットが普及した社会において問題となっている「オーバーロード」という状態です。

たとえば人間は23程度の家の中から自分が望むものを選ぶのはたやすいですが、これが数百数千となると途端に迷ってしまうでしょう。

情報が豊富なポータルサイトでもこれと同様の現象が発生し、ユーザーが真に自分の希望する物件を見つけられず、ただ時間だけを浪費してしまうということが起こり得るのです。

こうした状態を改善するには、よりユーザーのニーズを反映しつつ結果を抽出することができる優れた検索システムの導入が求められるでしょう。

まとめ

ZORCに代表される不動産テックサービスの台頭は、何もアメリカ国内だけのことではありません。

日本国内においてもこうしたポータルサイトを起点としたIT系サービスの需要が高まりを見せています。

今後、不動産はまずネットで探すといった流れは世界中において主流となっていくでしょう。